朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「うん。ありがと。笑満のおかげで一緒にいられたよ」
『それは咲桜、在義パパのおかげでしょ。在義パパからお許しなかったらあたしがどう動いたってムリだったんだから』
……確かにそうだ。妙に納得して、真顔で「なるほど」と肯いてしまった。
『あはは。今度在義パパにも作ってあげたら? ケーキ。龍生さんの味だったら慣れてるかもしんないけど』
「そうだね。そうする」
龍生さんが作るものは、正しくは『光子さんの味』だ。
……夜々さんから伝え聞いた話だけど、光子は在義を苦手としていたと言うか……あまり好意的には見ていなかったらしい。
在義父さんと龍生さんがつるんでいるのは常のこと。
そこに夜々さんがいるのもいつもの風景。
いつの頃からかそこに光子さんが混ざるようになったのだけど、光子さんは在義父さんには一線を引いて、決してそれを越えようとしなかったそうだ。
『在義兄さんは、芯が燃えているように強(こわ)くつよい人だからね、そういう人に、恐怖心ていうのかな……畏怖心とも言うのかしら、抱いてしまう人っているのよ。それが、龍生兄さんの恋人の光子さんだったの』