朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「わかった。そんときは頼む」
「うんっ」
大きく肯定されて、楽しい気持ちになる。
もう夜だからこれから離れると言うのに、咲桜はちっともそんな感じにさせない。
「じゃあな――一応外だから、キスはまた明日」
咲桜の頬を捉えて囁くと、大袈裟でなくびくりとされた。
それにまた笑いがもれてしまう。
何回か頭を撫でて、「冷えるから早く戻れよ」と言って離れた。
咲桜は手を振って見送る。
……嬉しいけど、本当に風邪ひかれたら嫌だから戻れ、と華取の家の方を指さしてから一度だけ手を振ると、咲桜はこくりと肯いた。
咲桜は満足したように踵を返して――止まった。
ぴたりと。心臓まで止まってしまったかのように。