朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「在義兄さんは桃ちゃんがすき。だから結婚した。私は、在義兄さんもすきだけど、桃ちゃんも大すきなの。二人の仲ぶち壊そうなんてするわけない」
「でも、桃子はもういません。在義と咲桜、お前のよすがももうないに等しいのですよ」
……それは、なんだ? 咲桜に、在義さんと縁を切れと言っているのか? ――冗談じゃない。
扉を引いた。
「失礼致します」
俺の声に、場の空気は更に張りつめたように感じた。
中はやはり道場だった。がらんと広い空間。
そこに、正座した箏子さんと、立ち上がった朝間先生。
箏子さんの前で小さく正座している咲桜がいた。
咲桜の瞳が俺に向いて、急に泣きそうになっている。ふざけるな。
「急の訪問、お許しください。問題を解決する方法を持っておりますので」
言って、咲桜を姫抱きに抱きあげた。