朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「きゃっ⁉」
「神宮さんっ?」
朝間先生は、来るのが遅いとは責めずに、俺の行動に目を見開いた。
「朝間箏子さん。咲桜が在義さんの娘であるのが我慢ならないと言うのなら、今日付けで神宮咲桜になってもらいます。
ご心配には及びません。咲桜はもう十六になっていますし、結婚の許しも在義さんにいただいています。
ああ、俺の教職は問題になるでしょうから、そちらも今日付けで辞職届を出して参ります。片手間にやっている仕事一本にする、いい機会です。
咲桜の住まいも、今日中に俺のアパートへ来てもらいます。在義さんも朝間先生も、咲桜に逢いたければうちへ来れば大丈夫でしょう。
――金輪際、咲桜の姿が貴女の瞳に映らないように致しますので、どうか二度と咲桜を傷つけることを言わないでいただいきたい」
響く声に、箏子さんも朝間先生も口を開かなかった。
咲桜を抱き上げたそのまま、道場を出た。
咲桜が、俺の胸のあたりの服を、きゅうと摑んで来た。