朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「お前……! どこに咲桜を隠していたのですか! 在義! お前も仲間ですか!」
「在義さんじゃありません」
俺は、自分より背の高い『在義さん』の隣に立って、そんなことを言った。
『在義さん』が口を開く。
「りゅうに、「少し手を抜いてくれ」って言われたから身長とかはいじってないんですけどねー。夜々子さんは気づいてましたよね?」
「え、ええ……だって、在義兄さんはそんな恰好しないですから」
『え?』
咲桜と箏子さんの声が揃った。
在義さんは、スーツのスラックスにタートルネックのニット姿。……あれ? と、咲桜は声を漏らして、何度も瞬く。
「咲桜、在義さんはいつもどんな格好している? と言うか――在義さんの私服ってどんなだ?」
「えと……いつでも出勤出来るようにって……スーツにシャツに……え?」
在義は基本的に、スーツ姿で家の中にいる。
出かけるときも、呼び出されることを前提にしている。
今の在義の格好はあり得ない。それに、俺より背丈は低い。
「もう取っていい?」
『在義さん』が俺にそんなことを訊いた。