【短】7時20分のあいつ
やっ、ばい。
俺と彼女の視線が、初めて重なった。
ドクン、ドクンと自分の心臓の鼓動が早く鳴っているのが、わかる。
俺は、ゆっくりと深呼吸をしてからパスケースを彼女に差し出す。
「これ、電車に落としてたから」
「わっ、ありがとう、ございますっ」
彼女は、どこか驚きながらもニコリと優しく微笑み、俺からパスケースを受け取った。
「じゃあ、失礼、しますね」
ペコリと俺に頭を下げて、また歩みだそうとする彼女。