終夜(しゅうや)
第一章:存在しない日付
私は彼の顔を見つめながら涙をこぼし、眼の真ん中へと涙を落とす。
視界が潤んで、目の前のことが全て、幻のように思えてきて、彼の眼に向けてこぼした私の涙だけが、最後に、彼の瞳の表面を伝って、目尻から頬へ伝う。
彼の眼から流れていたのは、全て私の涙だった。
「僕は操り人形か……。さようなら、京子。」
「今更、言わないで。」
会話をするには、余りに不自然な状況だ。力なく倒れ、仰向けになって床に寝そべっている彼と、その上から、彼の顔を覗き込んでいる私がいる。
日付が変わり、四月三十一日となったと言うにも関わらず、長い話が終わらない。気付けばもう、午前三時になってしまった。
「僕が気付かない訳が無い。気付いていたが、信じていなかっただけだ。幼稚な思い込みを繰り返し、それを正すこともできず、僕は、こんな事態を招いてしまった。」
「ね、ねえ。落ち着いて考えてみてよ。いくらなんでも、おかしいでしょ、こんなこと。アナタは加納仁(カノウ・ジン)で、私は久原京子(クバラ・キョーコ)。別人なんだから。」
視界が潤んで、目の前のことが全て、幻のように思えてきて、彼の眼に向けてこぼした私の涙だけが、最後に、彼の瞳の表面を伝って、目尻から頬へ伝う。
彼の眼から流れていたのは、全て私の涙だった。
「僕は操り人形か……。さようなら、京子。」
「今更、言わないで。」
会話をするには、余りに不自然な状況だ。力なく倒れ、仰向けになって床に寝そべっている彼と、その上から、彼の顔を覗き込んでいる私がいる。
日付が変わり、四月三十一日となったと言うにも関わらず、長い話が終わらない。気付けばもう、午前三時になってしまった。
「僕が気付かない訳が無い。気付いていたが、信じていなかっただけだ。幼稚な思い込みを繰り返し、それを正すこともできず、僕は、こんな事態を招いてしまった。」
「ね、ねえ。落ち着いて考えてみてよ。いくらなんでも、おかしいでしょ、こんなこと。アナタは加納仁(カノウ・ジン)で、私は久原京子(クバラ・キョーコ)。別人なんだから。」