愛のない、上級医との結婚
「でも樹里ってそういうの軽く笑って受け流しそうじゃない?
真面目な高野先生のことを適度に躱して上手くやりそうというか」
「私は相手が笑って受け流して良い人か駄目な人か判断して毎回のらりくらりと面倒ごとを躱してるだけで……ちなみに高野先生は後者だよ」
すなわち、なんかマズイ事があっても笑って誤魔化すが通じないタイプ。
私は要領が良いと評されることが多いが、それだって相手を選んでやっているのだ。
「それにしても樹里も結婚かあ。
26になると周りにもボチボチ増えてくるよね、既婚者」
「中学校の同級生とかね」
「そうそう、みんな早くない?……まあキャリア考えたら女医は本当に結婚はタイミングだからねー。入局後結婚だとめんどくさいから式とかしないんじゃない?」
「いや、まだそこまで考えてないけど、医局員呼ぶのめんどくさいし多分やらないんじゃないかなあ」
「だよねー。いいなあ、結婚。あー、あたしにも早く彼氏降って来ないかなあ」
ズズズ、とアイスコーヒーを飲む音が響く。
初期研修を終えたいま、なんとなくこのタイミングで結婚したり、逆に専門医を取るまではと後回しにしたり、医師は各々が道を選びつつある。
私もこの分岐点に来たんだなあと改めて思った。