愛のない、上級医との結婚
普通だったらこんな男、こっちから願い下げなんだろう。
表面上ですら私を尊重してくれてるわけでも、大事に思ってくれてるわけでもない。
相手が誰でもどうせ変わらない、ちょうど話を振られたから結婚するのは君でいいかーー。
そんなタイミングだけで、コンビニで目に入ったおやつみたいに軽いノリで結婚を決められたって何にも嬉しくない。上手くやっていけるなんて思えるはずもない。
だってこんなふうにぞんざいに私を扱う人は、優しくなくて冷たくてーー私をきっと不幸にする。
なのになんで私は、……寂しさとともに少しだけ、ワクワクしてるんだろう。
この人をもっと知ってみたい。
私のことだけ考えて、私に振り回されて、ぐだぐだになってしまったらきっととてつもなく愉快だ。
この男を変えてみたい。ーー他でもない、私の手で。
「……いいですよ、来週、籍を入れに行っても」
だから、まるで女王さまみたいに立ち上がった私は偉そうに腰に手を当てて彼を見下ろした。
これは宣戦布告だ。
今日この日に、こんな風に雑に私を扱ったことをいつか後悔させてやる。
「これからよろしくお願いしますね、私の未来の旦那さま」
冗談めかして、高飛車に微笑むと、少しだけ彼は目を見開いてから、挑むように私を見つめて頷いた。