愛のない、上級医との結婚
「ってことで、佐島先生、かつて遊び人だった佐島先生の心を虜にしたという奥様について詳しく教えて欲しいのですが」
「……無駄口叩いてる暇があるってことは割り当てた仕事量が少なかったか?ん?」
「サーセンした」
麗かな午後。
そよそよと爽やかな風が窓から入り、柔らかな日差しの差し込む病棟で、私たちはカルテを書いていた。腎臓内科には他にも教授含め10人ほど医局員がいるが、いまここには私たち二人しかいない。看護師さんたちもこちらを気にかけている風もない。
めちゃくちゃ恋バナできそうな状況である!!!
と意気込んで特攻したにも関わらず速攻で玉砕である。
くそ、質問の仕方が悪かったのか。
「遊び人は言いすぎました。図らずもモテてしまわれた佐島先生は奥様のこと好きになったキッカケとかあるんですか?」
「だから、さっきからなんでそんなこと聞くんだよお前は」
「今後の参考にと思いまして!愛される妻になるべく!」
チッと舌打ちをされたがめげない、私はめげない。
尚もキラキラした目で佐島を見つめていると、長いため息の後に佐島はおもむろに口を開く。
「俺の奥さんも女医なんだけど。俺が研修医のときの上級医だったんだよ」
「えっ、じゃあ年上ですか!」
「そう。俺が二年目、向こう五年目」
男女逆パターンは良くあるが、奥さんが上の先生だったなんてなんだかロマンがあって素敵だ。