愛のない、上級医との結婚
「何科の上級医だったんですか?」
「産婦人科を俺がローテートしてるときの、だな。
それがめちゃくちゃ怖かったんだよ、最初。
こんなのも出来ないの、とかお綺麗な顔で冷たく言われた時には震えたね」
「佐島先生ってドMだったんですね…」
「怒りで震えたんだっつの」
状況的に歓喜で震えたのかと思ってしまった私の思考が変態だったのか。
「まあ、でもその時俺、研修が中弛みしててさ。ある程度なんでも自分で出来始めた時期で、驕ってる時期でもあったから、そういうの見抜かれてたんだろうな。
ビシバシ扱かれてくうちに、なんか奥さんの冷たいのに可愛い一面があったりとか、仕事に一生懸命なところ見たりとかしてさ、……あと、意外に胸でかいとか」
「うわっ」
「そういうとこ見るもんなんだよ男は。で、まあ他の遊んでた女の子達よりこの人深みがあってもっと知りたいなあって思ったんだよ。あと、手料理めちゃくちゃ旨くてそれもポイントだった」
って、なにを語っているんだ俺は…と顔を赤くし始めた佐島に私はニヤニヤが止まらなかった。
ちなみに佐島は全く知らないだろうし、彼に教える気も毛頭ないが、実は彼の奥さんは私も産婦人科をローテートしているときに仲良くなっている。
ぜひ今度この話をしてあげよう。あのクールな顔が真っ赤に染まるのを想像すると可愛くて萌える。
「つまり、ギャップ萌えと料理上手がポイントってことですね!」
「滅茶苦茶一言で纏まったけど、まあ、そういうことだな」
なるほど、ギャップは生み出すのが中々難しそうなので、とりあえず私は料理で胃袋を掴むところから始めたら良いらしい。