秘書課恋愛白書

粘って粘って決まった第一志望の就職先。

恋人に一番に知らせたくて、連絡をせずに内緒で彼の一人暮らしのアパートを訪れたのがそもそもの発端。

もらっていた合鍵で扉を開けた先に待っていた玄関には私の物ではない女性もののヒールの高いパンプス。

不審に思って中へと踏み込めば、私と愛し合ったベッドで揺れる二つの影が交ざりあっていて驚愕した。

私が入ってきたことに気づかない二人は自分たちの行為に没頭する。

震える手が握っていたハンドバッグを床に落とした。

物音に気付いた二人は私を見るなり目を丸くする。


「あや…め…」


元彼のあの声、あの表情を今でも忘れることはできない。

声にならない言葉を発して元彼のアパートを飛び出したが追ってくることはなかった。

就職活動が始まった時点で、私たちの関係はとっくの昔に終わっていたことを思い知らされたのだ。

元彼はたしかにそこそこイケメンで人当たりもよく、高校時代はクラスの中心にいるような人物だった。

なんで付き合うことになったのかも、今となれば思い出せないが。
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