秘書課恋愛白書
「綾女、戻ってたんだ」
「…え、ええ」
昼休みが終わってからもう1時間以上経っていますよ、社長。
貴方は一体、どこでナニをされていたんでしょうね。
口には出さず内心悪態をつきながら手は動かす。
ちらりと画面から社長へと視線を移すと、先程の情事を感じさせないくらい涼しい顔をしていてスーツの着崩しもなく、髪の毛の乱れすらない。
だがフェロモンの漏れようだけは隠せてないようでそれに当てられないよう必死に手を動かした。
「そういえば明日だね、京都」
「そ、そうですね……」
言われてハッと思い出す、明日からの京都出張。
だが、出張に着いて行くぐらいでいちいち右往左往してたらキリがないから平常心を保つ。
「楽しみだね、綾女。きっと楽しいものになるよ」
「仕事で行くってことをお忘れなく。それに私は秘書として同行させていただくだけですからね」
「ハイハイ」
カタカタとキーボードを打ちながら返事をする。
そんな私を見つめながら思惑を秘め、黒い笑みを浮かべてる社長なんて知るはずもなかった。