秘書課恋愛白書

『宮野社長、いらっしゃいませ』


深々とお辞儀をする従業員たちの真横を通り過ぎてホテルのロビーへとたどり着く。

リゾート感を重視と言うだけあって開放感が凄い。

天井まで吹き抜けになっていてシャンデリアの光で装飾品はキラキラと輝く。

これ、一泊いくらするんだろう…と普通では泊まることのないであろうホテルに苦笑いを浮かべる。


すると、一人だけ雰囲気の違う男の人が近づいてきて私にペコッと軽く会釈をすると社長に深くお辞儀をする。



「社長、お久しぶりでございます。お待ち申し上げておりました」

「時枝久しぶり。急に海外から呼び寄せて悪かった。これからよろしく頼むよ」

「社長から直々のご指名でございます。誠心誠意やらせていただきます」



このホテルの総支配人として任命された時枝さん。

なんでも社長のお気に入りで海外でのホテル支配人を何回も務めてきた功績が評価され、今回日本へと呼び戻したという。

柔らかい笑顔で白髪混じり、きちっとしたスーツを着こなしたまだ40代後半ぐらいのジェントルマン。
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