秘書課恋愛白書
中原 綾女(アヤメ)
今年で27歳、独身アラサー女子。
趣味、貯金。
デキル女はスーツから。
頑張ろう、と気合を入れて鞄を引っ掴む。
忘れ物がないか身の回りを確認したところでリビングに飾られた写真に微笑みかける。
誰もいない部屋に「いってきます」とポツリと呟いて玄関の扉を閉めた。
***
最寄駅を降りてコンビニで毎朝の習慣となっているコーヒーを購入して徒歩5分。
オフィス街の一角に自社ビルを構える『Mキャリア』とロゴの入ったそこに私は勤めている。
「秘書業務専門の人材派遣サービス」と謳っているように秘書業を必要とする企業に出向し経営者である社長やその他役員、上司の元で働くのが主な仕事である。
会社は少数精鋭制であまり従業員は多くない。
だが、この界隈では名の知れた有名な企業なのだ。
そこで働く従業員はプロの秘書として様々な資格を有し、上司のサポートをこなす。
要は、会社で作った秘書課があまりにも役に立たないから専門職として外部から私たちみたいなプロを呼び寄せ、自社の秘書課の発展を図るとともに雇い主自ら秘書として雇うのが魅力のようだ。