秘書課恋愛白書
私の頬に手をかけた社長もピタリと動きが止まって、綺麗な顔が一瞬にして歪んだ。
「……どうしてこう、いつも邪魔が入るかなぁ。ねぇ、綾女」
「…………。」
今日は大丈夫だと思ったんだけど、と盛大に溜息を吐いてベッドから降りる社長。
私はどうしてこう毎回流されてしまうのかと自分の首を絞めてやりたい気持ちで胸がいっぱい。
社長はというと、緩めたネクタイを直しジャケットを取るとベッドで動けなくなってる私を見下ろしてきた。
「まぁ今日は夜まで長いし、ね?」
「…っ!!!」
不敵な笑みを浮かべる社長の背中には見えてはいけない黒いものが見えた気がする。
ゾッとして布団で体を覆い隠した。
やっぱり時枝さんに言って私の部屋を用意してもらうしかない。
どうしよう……と顔面蒼白の私を他所に社長は言葉を続ける。
「あ、これからのことだけど。僕は仕事で役員と会ったりその後も会食があるけど綾女はその間好きにすればいいよ」
「え?」
「観光でもしてきていいよ。ただし、20時頃までには部屋に戻ってきてること。いいね?」
「え?…は、はぁ」