秘書課恋愛白書
顧客のプライバシーを守る観点からセキュリティーの頑丈な入口を抜けて自分の部署のあるフロアへと向かうため、エレベーターに乗り込んだ。
おはようございます、と一人一人に会釈をしながら自分の席へと辿り着いた。
「おはようございます。みんな久しぶり!」
「中原さんお久しぶりです。大活躍だったようで!」
「聞きましたよ、今回も出向先の業績がうなぎ上りとか」
「いやいや、自分の仕事をしたまでよー」
お噂はかねがね聞いてます、と後輩たちがキラキラとしたまなざしで見るものだから少しばかり恥ずかしい。
「先輩おかえりなさい!…って言ってもまたお互い次の仕事に行っちゃうんですよね…」
「ゆきちゃん久しぶり。そうなんだよね、次はどこかな」
一番仲良しの後輩ちゃん、もといゆきちゃんが私の元へと駆け寄る。
こんなに部署中の人が集まっているのにはわけがある。
今日は私と同じように前の勤め先の仕事が終わって次の仕事に辞令が下る大事な日だからだ。
心なしか私を含めみんなソワソワしている気がする。
「そういえば先輩。部長がお呼びでしたよ」
「ほんとに?ありがとう」
後輩たちに行ってくるね、と言って私は部長室へと急ぎ足で向かった。