秘書課恋愛白書

「綾女は?今の仕事順調?」

「うん…好きでやってるから」

「そっか。あの頃言えなかったから言うけど…おめでとう。好きな仕事に就けてよかった」

「ありがと」


少しでも嬉しいと感じてしまう馬鹿な自分。

車を走らせること20分。

だんだんとホテルへと近づいてきた。


この辺、何かあったっけ…と呟くユウに私は道案内を続ける。

完成前のホテルでまだ世には情報が出回ってないからこっちの方向に何もないと思うのも仕方あるまい。

そして明かりのついた目の前にそびえ立つホテルを目の当たりにしたユウは驚いたように声を漏らす。


「これ、まだ完成してないよな?」

「そう。いまの社長がここに視察に来ててそれに同行してきたの」

「そうなんだ。あ、綾女スマホ貸して」


言われるがままにスマホを差し出せば何やら勝手に操作を始めてすぐに返される。


「これ俺の連絡先。東京に戻ったらもう一度会いたい。その時返事を聞かせてほしい」


勝手に連絡先を入れるとは…


「…もう会わないよ」

「なら降ろさない」
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