秘書課恋愛白書
社長は私の首元に顔を埋めて一言呟いた。
「うん、本当にアイツとは何にもなかったみたいだね」
上からそんな言葉が降ってきた。
だから、本当に飲んで話して帰ってきただけなんだってば!
まさかこれ、ユウと何かあったんじゃないかって本気で全身チェックされるわけ?!
「まぁアイツとなんかあっても僕が上書きするだけなんだけど」
一体どういう意味でしょうか…
ボーっと熱に浮かされた頭では何も考えれなくなってきた。
脚の間に割り込んできた社長の体によって脚を閉じることもできない。
いつもならここで何かかしらのハプニングやらアクシデントやらで邪魔が入って終わるはずなのに。
今日に限って何も起こらないことに焦りを感じる。
このまま社長の餌食になると恐怖で震え始める体を押さえ込みたくても震えは止まらない。
さらに生理的な涙が出てきて、私の頬を濡らしていく。
「……綾女、なんで泣くの?」
「もっ…やめてっ」
「今日は最後までできるよ?」
そう言うと柔らかい社長の唇が触れた。
なんで…
最後までする必要がどこにあるのだろうか。
こんなの望んでいない。
ぎゅっと目を瞑った。
結局…私も、昨日の女性社員と一緒じゃない。
嫌だと思っててもこうやって丸め込まれてしまうんだ。
なら一層のこと、何も考えずにこのまま社長に身を委ねてしまった方が楽なんじゃないか。