秘書課恋愛白書
今なら忘れたいことも全部忘れられる気がする…
ユウのことも…考えたくない。
すると、パタリと社長の動きが止まり不審に思って目を開くと潤んだ視界に社長の顔が映し出される。
だがその顔は一瞬にして歪む。
「……なんでそんな顔してるの」
「……え?」
私を見つめる社長は眉をハの字にして悲しそうな表情を浮かべる。
そして、そっと私の頬に触れ親指で涙を拭った。
社長の顔を見て変な安堵感を覚えてこの涙は出てくるのか。
はたまた、この行為に対しての恐怖心からなのか。
「ふっ…グスッ」
拭われてもぽたぽたと涙は溢れてくるばかり。
止まらないそれは私の意識とは別に流れてくる。
すると…社長は私の腕を掴んで起き上がらせると
ぎゅっと抱きしめてきた。
背中に回していいか迷ってる私の腕が宙を舞う。
はて……これは、一体どういう状況だ。
ますます社長が何を考えてるのかわからない。
急に優しく抱きしめてくるもんだから…
反応に困ってされるがまま動かずにいると、私の肩に顎を乗せた社長が口を開いた。
「あー、萎えた萎えた。そんな顔させてまでしたいわけじゃないんだけど」
「ぐすっ…な、な!?」
「まるで僕がいじめてるみたいじゃん」
ご自身でもちゃんとわかってるじゃないですか。
「怖かった?」
その問い掛けにコクンと小さく頷いてみせれば優しく頭を撫でられる。