秘書課恋愛白書

「一度だけ酔っ払って学生時代のこと話してたなぁ。その彼氏と別れたのも浮気が原因で、しかも浮気中に遭遇してもう修羅場だったって」

「とんだ修羅場に遭遇したんですね…」


そりゃトラウマになるわけだよ、と呟いたマスターの言葉が響いた。

トラウマになってるってどういうことだろう。


「トラウマ?その浮気が原因で?」

「なんでも彼氏と知らない子が彼氏の部屋でしてたんだって」

「……それは、もう…なんと言っていいやら…」


ここだけの話だからね?とひっそりと話すマスターはもうおしゃべりが止まらない。

でも、自分の知らない綾女の真実が少しずつ見えてきた気がする。



「……そういうことか」



やっとわかった。


綾女が僕のことを嫌いだと言ったことも、あんなに嫌悪感を曝け出してぶつかってきたことも。

全部、過去に起きたことが原因で引きずっているのか。

そしてそれを知らずに自然と綾女を傷つけていたことも紛れのない真実であることに変わりない。

恋だの愛だの面倒くさいとか、余計なことまで言った気がする。
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