秘書課恋愛白書
「俺だってなぁ…うちのエースを潰すようなところに行かせたくはないんだよ」
そう言っておいおいと泣き真似をする部長。
じゃあ辞令が出る前に止めてくださいよ!
「そうですよ部長!エースの成績でうちの部署はトップみたいなものなのにわざわざ潰されるかもしれないところに行かせるのはどうかと思いますけど?!」
剣幕な表情でゆきちゃんが部長に訴える。
潰されるって言い方がもはや怖い。
「でも。なぜ私なのでしょうか。私よりももっと成績も実績もある先輩方がいるのに」
「なんでも宮野社長直々のオファーらしい。そりゃ役員クラスだって中原出すしかないよなぁ」
「きっと先輩のジンクスを耳にしたんですよ!」
そうに決まってる、とゆきちゃんは興奮しように話す。
自分で言うのもあれだが、巷でジンクスを聞きつけた経営者が時々私を秘書に、とオファーが来ることは珍しいことではない。
だがそれもこの5年間はどちらかと言えば中小企業や二部上場企業を相手に仕事をしてきた私。
いきなり一部上場企業しかもこの会社の親玉の秘書課に出向で配属なんてもう何から考えればいいものか。