秘書課恋愛白書
「レイちゃん残念だね…アヤメちゃんみたいな真面目な子は絶対破らないから一筋縄ではいかないよ」
まぁ飲みなよ、とマスターはおかわりのビールを差し出してきた。
………綾女みたいなタイプは絶対に破らない。
すぐにピンときた。
「そんな社訓、三谷に言ってすぐやめさせる」
傘下の会社の社訓くらい僕が電話をすれば二つ返事で改訂されるだろう。
「いいじゃないですか、ゆっくりジワジワ攻めていけば」
「僕そういうの面倒くさいんだよね」
「レイちゃんとアヤメちゃんがくっつくのは嬉しいけどお願いだから穏便に済ませてよ…」
苦笑いを浮かべるマスターにハイハイと返事をしておかわりのビールを飲み干した。
あー…綾女に会いたくなってきた。
実を言うと、綾女に嫌いと言われたあの出張の日から少しずつ距離を置くようにしていた。
社長、と敬称で呼ぶ彼女の唇を見るたびにキスしたくなるし、名前で呼んでほしいと欲が出てくる。