秘書課恋愛白書
ちょっとでも近づいてしまうと触れたくなってしまうから。
綾女をこの腕で抱きしめて、めちゃくちゃにしてしまいたい衝動に駆られるのを必死に抑えていたのだ。
それほど気付けば綾女のことばかり考えている自分がいた。
仕事中は綾女の意向に沿って、ただの上司であり続ける努力をした。
嫌われたくない、と思うのも綾女だからだろう。
だから前みたいに寄ってくる女を相手にすることもなくなった。
この変わりようには自分でも驚きを隠せない。
「ふはっ…まさかこの僕がなぁー…」
「どうしました?」
「いーや、なんでもない」
考えたら笑いがこみ上げてきた。
こんなにも綾女1人に心が振り回されるなんて思っても見なかったな。
こんな気持ちは久しぶりで、彼女を好きになった時の感覚によく似ている。
でもここまで本気になったのは多分初めてで。
どうやったら落ちるかな…
なんて思い耽けていると、たけるのスマホが鳴った。
こんな時間に掛けてくるのはきっと奴らだろうけど。