秘書課恋愛白書
通い始めて早4年。
慣れた足取りで向かうのはいつものカウンター席。
私に気づいたのはカウンターの中でシェイカーを振るうマスター。
「やあ、こんばんは綾女(アヤメ)ちゃん」
「こんばんは、マスター。今日は思いっきり甘いのが飲みたいな」
「オッケー。いま用意するね」
ニコッと愛想の良い笑みを浮かべるこの人は、ここのマスター。
推定年齢50代前半。
少し白髪混じりで目元の笑い皺が印象的。
とても気さくでなんでも話せる人。
はい、と渡されたおしぼりに手を伸ばし周りを見渡す。
カウンター席には私の他にちらほら2、3人のお客さんがいた。
酔い潰れて寝ている人もいれば、いささか怪しい雰囲気の男女もいる。
さすが夜のお店って感じ。
横目で観察しつつ、お酒が出来上がるのを待った。
「綾女ちゃん。何か良いことでもあったかな?今日は大荷物だったね」
「うふふ、気づきました?お客さんにスーツ仕立ててもらったの」
「それは良かったね。でもなんで?」
「今日で抱えていた仕事が一区切りついて、めでたく5年目に突入します!」