秘書課恋愛白書
もう会わないし、きっと連絡を取ることもないだろう。
そう思って私はゆっくりとユウの元へと近づいた。
ぎゅっと背中と肩あたりにユウの腕が回り私を抱きしめる。
応えるように私も腕を回して大きな背中を優しくポンポンと撫でた。
好きになってくれてありがとう、と意味をこめて。
側から見たらただのバカップルの抱擁現場であろう。
そんなことを考えていた次の瞬間、体に激痛が走った。
え…何?
スローモーションに見える景色。
ユウの腕から離れていく自分。
後ろに倒れる、そう思ったが柔らかい何かによってそれは阻止された。
激痛の走った右腕を見れば、誰かの手に寄って強く掴まれていた。
「……み、やの社長…?」
振り返るとそこには額に汗をかいて息を切らした社長の姿があったのだ。
なんで?
なんで社長がこんなところに?
いきなりの出来事に状況が飲み込めない私。
目の前にいるユウも呆然とこちらを見つめていた。
「キミは…っどうしてそうふらふらと」
「…は?え?」
髪の毛を掻き上げて息を整える社長をただ見つめていることしか出来ない。
「綾女……?宮野社長って…まさか」