秘書課恋愛白書

ユウもこの状況を把握することが出来ないようだ。

社長は私の腕を掴む手の力を強くする。

そして自分の方へと引き寄せると、私はそのまま社長の胸へとダイブしたのだった。


ど、どういう状況ですか?

なんで私はユウの前で社長に抱きしめられてるの?


押し返しても強い力で肩を抱かれ、まるで私が社長の胸に飛び込んだみたいな図になってしまった。

すると、社長は私の頭上で聞いたことのないくらい低い声を出した。



「キミ、綾女のなんなの?」

「なにって…えっと、元彼と言うか…」


チラリと横目でユウを見ると、蛇に睨まれたカエルのように萎縮しているではないか。

たしかに社長みたいな綺麗な顔に睨まれるって凄い迫力だろうな、なんて他人事みたいに思ってしまう私。


「……元彼?…やっぱりそうか」


ポツリと頭上で呟くのが聞こえた。


「しゃ、しゃちょ…?」

「元彼ってことはもう終わってるだろ?だから今後一切綾女には近づかないで」


何をおっしゃってるんですか。

どんな顔してそんな御託を並べてるんですか。
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