秘書課恋愛白書
っていうか、変わろうとしたって何?
何を変わるって?
頭の中でぐるぐるとそんなことを駆け巡らせていると、社長の顔はどんどん険しくなるばかり。
まるで私の答えを待っているかのようで…
「特に深い意味はないです。ただ向こうが最後にって抱きしめさせてと言ったので…それに、なんで社長がそんなにキレてるのかわからないです……」
「頭良いくせにそういう鈍いところどうにかならない?」
嫌味ったらしくそう吐き捨てる社長に私もカチンときた。
「はー?!さっきから鈍感とか鈍いとかなんですか?!社長こそ何かと濁してるじゃないですか!ハッキリして!」
私の言葉にぐっと口を噤む社長。
じっと見つめると目を逸らされた。
気づけば形勢は逆転していて、私が社長を問い詰めるような感じになっていた。
「……僕が何のために女遊びをやめたと思う?」
「え……?」
「あの仮眠室を使ったのもあの日っきりだ。それに綾女にだって…手出してないだろ」
「……そうですね」
……たしかに。
出張から帰ってきてからの社長は人が変わったみたいに仕事もきっちりやっていたし、私に近づくこともなかった。