秘書課恋愛白書
「ちょっと電話してくる。先食べてて」
「あ、はい。わかりました」
短く溜息をついて店の中へと入っていく社長の背中を見送った。
また仕事関係の電話なのかな?
土日なのに仕事の電話が直で来るなんて険しい顔をするのも納得できる。
すると、料理が運ばれて来て目の前に置かれたキラキラの朝食に思わず唾を飲み込んだ。
なにこれ、美味しそう。
社長はこんな美味しそうな朝食を食べて出社してるんですか。
思わずスマホを取り出して撮りたくなる気持ちをグッと我慢して目に焼き付けていると、
「お気に召していただけましたか?」
と後ろから声をかけられた。
振り向くと、真っ白のコック服を見に纏った少しワイルドな60歳くらい男性が私の方に向かって歩いて来た。
「はい、とても美味しそうです」
「これ、フル・ブレックファストと言ってイギリスの伝統的な朝食なんです。社長のお母様がお好きでね」
「社長のお母様……って」
そういえば社長って、外国の血が流れているのよね?
「ご存知ありませんでしたか?宮野社長のお母様はイギリスの方です。色濃く出てますよね、本当によく似ておいでなんですよ」
「そうなんですか…」