秘書課恋愛白書

両腕をバタバタさせて必死にバランス感覚を保とうとした。

社長が差し出した手がスローモーションで再生される。

掴んだが逆にこちらの強い力が作用してその手を引いてしまい、2人一緒に海へと落ちていく。

バシャンッと音を立てて飛沫を浴びた。

気をつけろって言われていたのにやってしまった…

そう思った時には目の前で濡れた前髪を搔き上げる社長が海に浸かっていた。


「あーあ、だから言ったのに」

「すみません…足がもつれてしまいました」


ポタポタと社長の金色に輝く髪の毛から雫が伝って落ちる。

ポケットからゴムを取り出すと、髪の毛をくくってみせた。

そのしぐさにもだが、髪の毛を束ねた社長の姿はまた新鮮でドキンッとしてしまう。

立ち上がって腕の裾とジーンズの裾を捲り上げると少し筋肉質で男らしい腕と脚を露出させた。


「まぁ綾女ならやると思ったけど。ほら」


わかってましたとでも言いたげな顔をして私に手を差し出した。

差し出された手に大人しく掴まって立ち上がる。

すると思いっきり手を引かれて社長の腕の中へとダイブしてしまう。


わっ…なに?!


ぎゅっと抱きしめられて心臓が余計にドキドキと鼓動が急速に跳ねる。
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