秘書課恋愛白書
抱きしめられた腕が緩くなり、社長を見上げると真剣な眼差しで私を見つめていた。
社長の濡れた手が私の頬をスルリと撫でる。
顔が近づいてきて、
あ…キス、される…
そう思って自然とギュッと目を閉じた。
…………あれ?
何も起きないことに違和感を感じて薄っすらと瞳を開くと、目の前で顔を覆い肩を震わす社長の姿がそこにはあった。
「ぶっくく……」
「え?」
「綾女…僕に…キスされると思ったでしょ」
「!!」
必死に笑いを堪える社長に勘違いした自分が恥ずかしくてボンッと湯気が出てしまいそうなほど顔を赤くさせた。
「なっ…なっ…!」
「前髪に海藻ついてたから取ったの」
ヒラヒラと私の目の前に海藻をチラつかせて笑い続ける社長に盛大な勘違いをしてしまったようだ。
恥ずかしい…
「まさかキミの方から望んでくれるなんて。そんなにキスしたいならするよ」
「え…んんっ」
恥ずかしさで居た堪れない状態の私。
俯いていた私の顎を掴むとぐいっと持ち上げ、社長と視線が絡むと性急にキスされた。