秘書課恋愛白書
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濡れた服が乾く頃まで浜辺を歩いて探索し、気づけばお昼を過ぎて夕方になる手前。
地平線が見え落ちていく太陽を背に車は発車する。
「最後に一つだけ、寄りたいところがあるんだ」
そう言った社長に大人しく付いていくことにした。
海岸沿いに車は走り都心へと近づいてきたかと思えば、今度は山の方へと向かっているらしい。
随分とアウトドアな1日である。
向かう途中お花屋さんに寄って、なぜか花束を作るための花を選ばされたのは謎のまま。
自分の好きな物でいい、と言われたがあまり花に詳しくない私はある人が好きだった花をとりあえず選んだ。
車を走らせること数十分後に、着いたのは…
「ここって…なんで」
「いくよ」
駐車場に車を停め、腕に花束を抱えて颯爽と歩く社長に慌てて着いていく。
山奥にしては綺麗に整備された階段をどんどん登っていき、同じものが沢山立ち並ぶある一ヶ所目掛けて社長は歩みを進めていく。
胸がザワザワする。
なんで…なんで社長がここを知っているのか。
知っている人間がいるとすれば私とマリカと、付き合いのあまりない親戚ぐらいで。