秘書課恋愛白書
なんで…そんなことするの?
社長は静かに口を開いた。
「綾女のお母様、初めまして。宮野怜と申します」
まるで…
「綾女は頑張り屋で一人でなんでも溜め込むことが多いですね。ですが、僕がそれを助けてあげられる存在になりたいと思っています」
まるで…目の前に母がいるかのように話しかける社長。
「綾女と出会うまで僕はあまり自慢できるような性格ではありませんでした。綾女のことも…たくさん傷つけました。でも、真正面からぶつかってくる綾女に、いつしか心を動かされていた」
「………っ」
「綾女がいたからこそ、変わろうと思えたし嫌われない努力もできた。奈落の底にまで堕ちた僕を救ってくれたのは綾女なんです」
初めて聞く社長の本心に、気づけば涙が溢れていた。
母の眠る墓、母は社長の言葉をどう聞いているのだろうか。
「だからこそ、今度は僕の番です。アナタの居なくなったこの世界で僕が綾女を守っていけるような存在でありたい。綾女を僕に任せていただけませんか?」
「社長……っ」
抑えきれない気持ちが爆発して、気づけば社長の背中に抱きついていた。
知らなかった、そこまで私のことを考えてくれていたなんて。
もう自分の気持ちもハッキリしているような気がした。