秘書課恋愛白書
「……綾女、これ下持ってって」
「は、はい」
ノートパソコンの画面から目を離すことなく私に向かって書類をヒラヒラさせる社長に慌てて駆け寄る。
その画面を覗き込めば相変わらず株の取引に夢中のご様子。
秘書と言えどもまだまだ勉強不足な面もあり、株取引については勉強中。
社長が得意としてるから一応サポート出来るようにはなりたいと思っていた。
いつになく真剣に見つめているものだから話しかけないでおこうとそっと書類を受け取る。
つもりだった。
「んひゃぅ!」
静かな社長室に私の奇声のような悲鳴が響いた。
バサバサと音を立てて足元に散っていく書類。
気づけば社長の膝に乗せられてお姫様抱っこされているではないか。
「くくっ…緊張しすぎ」
「…!!」
「物欲しそうにこっち見てくるからさ。顔強張ってるよ」
そんな顔してない!
強張るのだって、誰のせいだと思ってるんですか!!
パクパクと金魚のように口を動かす私に笑う社長はタチが悪い。
ましてやこんなお姫様抱っこ状態で誰かに見られたらどうするつもりなんだろうか。
「会社でこういうことするのは!いかがなものかと思いますが!!」
コンプライアンス的を会社の顔である社長が破ってるあたり大問題なのだが。