秘書課恋愛白書
「…失礼します!」
女性は凄い慌てようで着崩れた服を少しだけ直しカーペットに散らばった服を掴むと慌てて出て行った。
ただ私の横を通り過ぎる時に睨まれたような気がした。
気まずい雰囲気の中その場にとり残された私とその部屋の主。
第一印象は最悪。
イケメンだろうがなんだろうが、中身はなかなか派手でいらっしゃるようだ。
こんな社長室でおっ始めちゃうぐらい。
これが噂の自由奔放社長か。
「お楽しみのところ失礼いたしました」
妙に感心しつつも何事も無かったかのように深く頭を下げる。
はぁ、と短く私にも聞こえるような溜息をついたのはこの部屋の主の方。
「別に楽しんでないからいい」
誘ってきたから乗っただけ、と付け加えて社長は乱れた首元を直し始める。
さぞかしおモテになるんでしょうね。
窓の外を眺めながら話す社長の素性はまだ知れない。
「改めまして。本日より宮野ホールディングス秘書課、社長付きに配属になりました中原 綾女と申します」
よろしくお願いしますと頭を下げた。