秘書課恋愛白書
そう、あの人と目が合った瞬間に私は悟ったのだ。
社長はきっと…私の中にあの人を見てた。
私とあの人を重ねていたんだと思う。
「私を好きだと言う社長はっ……きっとあの女性と私を重ねていたんです」
考え始めたらボロボロと涙が止まらなくなって手で顔を覆った。
「中原さん、それは違います!貴女と彼女は全く別の人間で、怜はちゃんと貴女を好きになったと思いますよ?」
ふんわり頭を撫で、背中を撫でる優しい手、灰田さんの言葉に余計に胸が苦しくなる。
社長は本当に"私"を好きになったのかな。
見てはいけないものを見たせいで信じられなくなっている自分がいる。
もうわかんない。
社長に好きだと言われたことにすら自身を持てなくなっていた。
止まらない涙を必死でぬぐっていると、ポケットに入っていたスマホが揺れた。
先程からずっと鳴りぱなし。
……そういえば、会社に連絡してない。
サァーッと血の気が引いて涙で歪む視界の中画面を見つめると…
着信件数、30件。
そのほぼ9割を占めるのが…社長。
残り1割が三谷室長からだった。
どうしようかと固まる私に灰田さんは後ろから画面を覗き込んできてた。
「どうやら怜も相当焦ってるようですね。とりあえず会社には連絡しておきましょうか。えっと、中原さんの上司は三谷くんでしたっけ?」