秘書課恋愛白書
玄関の扉が開く音がするのと同時に「キャッ!」という悲鳴が聞こえて何事かと立ち上がる。
「マリカー?どうしたの?」
悲鳴の正体が気になって、居間抜け玄関へと繋がる廊下へ出ると…
「え…うそ、」
「綾女…」
「しゃ、ちょ…う?」
血相を変えて扉を押さえる社長の姿がそこにはあった。
え…なんで社長がうちに来てるの?
さっきまでの光景が脳裏に浮かんで足がすくんだ。
シーン…と静かな空気が流れて状況に戸惑っていると、マリカが口を開いた。
「あー…っと私、もう行かないと!綾女ごめん!無事家にも送り届けたし私帰るね!」
「え、ちょっとマリカ…!」
足早にベッドルームへと戻っていき荷物をまとめるマリカ。
サクサクと帰り支度を始める姿にオロオロする私。
「マリカ、待って…!!」
「綾女、ちゃんと話すって決めたでしょ。自分の気持ちに素直にね」
ボソッと私の耳元で囁いたマリカは、引き止める私の制止も聞かずにニコニコと笑みを浮かべたまま部屋を出て行ってしまったのだ。