秘書課恋愛白書
その場に取り残された…私と社長。
バタンと音を立てて閉まる扉。
扉に向かって伸ばした行き場の無い手が震えた。
「…綾女」
「やっ!」
震える手を社長が掴んだ。
だが私は反射的にそれを振り払ってしまった。
「あっ……」
無意識で振り払ってしまった…
案の定、社長を見ると悲しそうに目を伏せていた。
「あの…えっと…」
「とりあえず、入ってもいい?」
「……どう、ぞ」
玄関でこのまま話すわけにもいかないわけで…
まさか社長を自宅に招き入れる日が来るとは。
しかもよりによってこんな日に。
内心、これからどうしようとヒヤヒヤ。
ぎこちないまま社長を居間へと案内した。
「……キミも意外と生活感ないんだね」
「仕事、ばっかりの人間だったので…寝に帰るためだけの部屋です…」
居間へと足を踏み入れると、キョロリと私の部屋を見回した社長。
この一人暮らしの部屋に住み始めてから男の人を入れるのも社長が初めてだしなんだか緊張する。