秘書課恋愛白書
それに、先程社長の手を振り払ってしまった一件もあって余計に気まずい。
私はカーペットの敷かれた床に座り込んだ。
どうぞ、とソファーに座るのを促すと社長は首を横に振る。
申し訳なさそうに視線を落とす社長が口を開いた。
「…綾女、僕は…」
「言わなくてもわかってます…。あの人なんですよね、社長が好きだった人って……」
「……っ」
私の言葉に社長の顔が歪んだ。
人伝てに感じるのと、本人から感じるのとはやっぱり重みが全然違い泣きそうになるのをグッと堪えた。
「社長。社長が私を好きになったのは…
あの人に似ていたからですか?」
怖いと感じるのに気づけば核心に迫っている自分がいた。
「綾女、待って…僕の話を聞いて」
すくっと床に立ち膝をして私の頬に社長の手が触れた。
たったそれだけのことなのに、また胸を締め付けられる。
「やだ…聞きたく、ないです」
「違う。違うんだ。ちゃんと全部話すから聞いてほしい」