秘書課恋愛白書

ちゃんと話そうと思ったけど、いざこの状況になってみると社長から聞く真実が怖い。

やっと、やっと好きだと思えたのに。

やっと社長のこと好きだと感じれたのに。


やっぱり、"私じゃなかった"なんて、社長の口から聞かされるんじゃないかと考えたら体が震えた。


滲む視界は社長の悲しそうな顔でいっぱい。

私だって、貴方のことを考えてこんなに胸が苦しくて悲しい気持ちなのに。


「私、私だって社長のこと…


やっと好きだと気づけたのにぃー…」


社長を目の前にして我慢の限界。

私の瞳からボロボロと涙が溢れた。


「綾女ーー」


刹那、私は社長の腕の中にいて強く強く抱きしめられていた。


「綾女…あや、め…」


私の体を抱きしめる腕が震えている。

まるで私の存在を確かめるよう何度も耳元で名前を囁く。

あんなところを見せられたのに、私は社長が好きだからもうこの腕は振りほどけない。

溢れる涙は止まることを知らず社長のスーツを濡らす。


「ふっ…うぅ…」


私の泣き声だけがしばらくの間静かな部屋に響いた。



「…このままでいいから僕の話を聞いて?」


そう言う社長に小さくコクンと頷いて見せた。


「確かに、最初出会った時。彼女に似ているキミに興味を持った。それは事実だ」


やっぱり…予感は的中する。

私は社長のワイシャツをぎゅっと握りしめた。
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