秘書課恋愛白書
「誤解って……?」
「たけるから連絡貰って全部聞いた。綾女が顔色を変えてあの場からいなくなったのはなぜか。会社を飛び出したのも、僕からの着信を全部無視したのかも」
「……ごめんなさい」
ポツリと呟くと、くしゃりと頭を撫でられる。
そして社長の両手がふんわりと私の両頬を包み込むとコツンとおでこがぶつかった。
涙で濡れる頬を指でぬぐって真っ直ぐ私を捉える。
「勘違いさせた僕が悪い。綾女が社長室でどんな光景を見たのか…僕は彼女とキスしたりしてない」
「ほ、んとに…?」
「綾女のことが好きなのに他の人とするわけないだろ?」
「社長…ふっ…」
「多分…彼女の具合が悪くなって支えた時に、そう見えてしまったのかもしれない」
そう言って、勘違いさせてごめんね。ともう一度私をギュッと強く抱きしめた。
私は社長の腕の中でフルフルと首を振り続けた。
違う、私が勝手に勘違いして勝手に悲観的になってしまったんだ。
社長は誠実でいてくれたのに、信じなかったのは私の方。
「ごめん、なさぁ……わたっし…私、社長を、信じなかったです…」
「うん、わかったわかった。誤解が解けてよかったよ」
号泣する私に笑いをこぼす。
ポンポンと子供をあやすように背中撫でてくれる。
ここまで好きになっているなんて、思いもしなかった。