秘書課恋愛白書
社長の柔らかい髪の毛が私の頬を撫でる。
くすぐったくて身をよじると私の首筋に顔を埋めて深く息を吐いたのだ。
「綾女、何も言わないならこのままするよ?」
「…んっ」
「僕はちゃんと、キミの口から答えを聞きたい」
その気にさせられてしまうのも簡単で…
でも今回は流されてするわけではない。
社長が私を好きになってくれて、応えるように私も社長を自然と好きになったのだ。
それに、"オトナの恋愛"はこういうことも含まれるわけで…
社長が喋るたび吐息が首筋に掛かり、身震いする。
恥ずかしくて逸らしていた視線を社長の顔に向けると、ぐっと口を噤んで私を見下ろしていた。
「綾女」
「……い、いです、よ?」
恥ずかしくて恥ずかしくて、答えるのも精一杯。
顔を両手で覆い、蚊の鳴くような消えそうな声でそう呟いた。
指の隙間から社長を覗くと…
口元を手で覆い、私から視線を逸らしていた。