秘書課恋愛白書

キスされた頬を擦りつつやっとの思いで口を開く。



「着任早々大変申し訳ありませんが、今回は御縁がなかったということで丁重にお断りさせていただきた…

『いいの?そんなことして。僕を誰だか忘れた?』」


私の言葉を遮りちょっと強めの口調で脅し文句を言い放つ彼。


「……どういう意味でしょうか」

「キミが辞めるっていうならあの会社にもいられないね?ほかに転職考えてもウチの影響力忘れてないよね?」



キミ一人くらいどうにでも出来るんだよ、とそっと耳元で囁く。


「そんな…こと」


なんて卑怯なんだ。

あの時、意地でも名刺なんて渡してなければ…!

己の愚かさを呪うしかなかった。



「てことで。異論は認めないよ。な か は ら サン」

「……………!!!」


そう言ってぺろりと私の耳たぶを舐めた。

ひぃっと悲鳴をあげて後退りした先には壁。


背中は壁、目の前には彼…社長に追い詰められてしまった。

これが所謂壁ドンか、なんて悠長なこと考えてる場合じゃない。

でもブルーの瞳が私だけを移し、捕らえ、あの時のように目が離せない。
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