秘書課恋愛白書

よかった、いつもの明るさを取り戻した明凛の笑顔に安心感を抱いた。

好きな人から好きだった人に変わったとしても明凛は大切な人には変わりないし、変わらず笑顔でいてもらいたい。

そう切に願う。


「そういえばー…。こないだたける先輩が話していた怜先輩の好きな人の話、私にもぜひ聞かせて欲しいんですが?」

「…そういう余計なことは忘れてくれていいんだけど」

「だって!そういう話聞いたことなかったから!」


コロッと表情を変えてキラキラの瞳が僕を見上げる。

急に自分の話になりだんまりを決め込むが、僕の腕を掴んで揺さぶり教えて!!と屈む明凛。

そりゃそうだ、綾女と出会うまではキミのことが本当に好きだったんだからそういう話がないのも当たり前だろう。


…とは言わずに明凛から視線を背けた。


「私が知らないとでもお思いですか?聞いちゃったのよね〜怜先輩が◯◯デパートのジュエリー店で女性物の限定ネックレスを購入したって、ね?」


ふふん、と鼻を鳴らして得意げに話す明凛に僕は真顔になった。

不覚にも…忘れていた。

明凛の高校時代からの親友が全国展開の某有名な宝石店のご令嬢であり明凛の会社の傘下に入っていることを。
< 282 / 320 >

この作品をシェア

pagetop