秘書課恋愛白書
狭い世界で一緒に育って来た彼らと僕らの間には情報も筒抜けということだ。
「はぁー…あそこも系列だったか」
「お買い上げありがとうございますーっ!もちろんその好きな人に渡したのよね?ね?」
しまった、と口元を手で覆い照れ隠しする僕に明凛はさらに詰め寄ってくる。
言うまで離さない…とでも言いたげな顔をして僕のジャケットを掴んだ。
顔が近く、より一層キラキラした瞳が期待に満ちていて言わざるを得ない状況を作り出した。
「…キミ、そういう話になった途端に元気になったね」
「それはそれ。これはこれ」
「ははっ…明凛らしい」
で…、相手は誰なのーー…
と明凛が口を開いたがその体が急によろめいた。
瞬間、崩れ落ちる明凛に手を伸ばして僕のデスクにぶつけそうになる体を守るように抱きとめた。
だが、上手く態勢を維持出来ずに明凛を抱きかかえたまま体を床へ打ち付けた。
ドンッと鈍い音がして背中に痛みが走った。
「……っ」
痛みに顔を歪め、明凛の無事を確かめるように顔を覗き込めば顔色が先程よりも悪くなっているようにも見える。
その瞬間…
「大丈夫ですか?!」
そう叫んで剣幕な顔をした綾女が社長室へと乗り込んできたのだった。