秘書課恋愛白書
「綾女……?」
そして僕と明凛の状態を目の当たりにするとに扉の前で佇んでいた。
んん…っとくぐもった声を出して倒れた体をゆっくりと起こす明凛が僕の顔を見て視線を辿るように後ろへと振り返る。
すると、綾女は何かを察知したのか目をまんまるにして少しだけ泣きそうな顔をして見せた。
「あ、あの……失礼しました!」
「綾女!!」
僕の制止も聞かずに社長室を飛び出してしまったのだった。
ああ…また綾女にあんな顔をさせてしまった。
状況を察するに、きっと僕と明凛の関係にも気づいたことだろう。
「はぁー…」
「怜…先輩、すみません。急に眩暈がして」
「明凛が無事でよかったよ。大丈夫?」
深く息を吐いて痛む背中を庇いつつぶつけた頭を摩りながら起き上がる。
「私は大丈夫…だけど、怜先輩が大丈夫、じゃないよね?」
「……明凛が気にすること何もないから」
そう、明凛のせいじゃない。
全部僕自身が招いた結果だ。
そう吐き捨てた僕に明凛は顔面蒼白になった。
「気にするわよ!だって…さっきいたあの人が、怜先輩の好きな人でしょ?!」
「……っ」
「鈍い鈍い言われ続けた私だってそれくらいわかるわ!」