秘書課恋愛白書

「中原さん落ち着いて!確かに高価な物には変わりないですけど、知っていて欲しいのはなぜそのネックレスだったのか、なんです」

「なぜ…このネックレス、かですか?」


そう聞き返せば、神田社長が頷いて見せた。


「その石の意味を貴女には知って欲しいんです。その石の名前はインカローズといいます。宝石言葉は…


『新しい愛の到来』『秘めた情熱』」


神田社長はゆっくりと語り始める。

ネックレスを女性に贈ること自体が「相手を独占したい。束縛したい」という意味らしい。

そして、胸元で赤く輝く石の宝石言葉が『新しい愛の到来』『秘めた情熱』。


インカローズの石には持つ人に永遠のパートナーにめぐり会わせて、幸福な恋愛をもたらすと言われているようだ。

恋愛で傷つき異性に対して臆病になっていたり、心に傷を負った人を愛情で包み込む力があるとされているらしい。

そこまで考えて選んだとは思えないけど、それを選んだ時点で気持ちがハッキリしていたはず、と言う。


「怜先輩は、貴女にそれを渡した時から好きだったんでしょうね」

「………そんな」

「実際、効果があったみたいでよかったです」


そんな風に考えたこともなかったし、社長がどんな思いでこのネックレスを私に付けたのか全く知らなかった。

ふふん、と得意げに鼻を鳴らして教えてくれた神田社長にとても感謝した。
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