秘書課恋愛白書
「僕のメリットは?」
「京都のホテルのオープンイベントの宣伝になります」
「ふーん…」
綾女にしては考えてきた方じゃん、と言ってもう一度企画書に目を通す。
でもやっぱり興味無さそう。
さて、どうすればやる気になってくれるだろうか。
うん、と言わせるにはどうすればいい。
「あのー…なんでそんなにメディアに出るのが嫌なんでしょうか」
「めんどくさい」
本当にそれだけの理由で嫌なの?!と私は社長の返答に言葉を失った。
たしかにこんな企画に取り上げられなくても名の知れた企業だし、社長としての器も申し分ないんだけど。
脳裏に浮かぶゆきちゃんの顔。
ダメだった、と伝えたら泣きそうな顔するに違いない。
どうするかなー、と社長が目の前にいるにも関わらず盛大にため息をついて見せる。
一瞬の気の緩みでもう一つの企画書をバサバサと落としてしまった。
「失礼しましたー…」
社長の足元まで落ちてしまい慌てて拾い上げようと屈むと、長い腕が伸びてきて先に拾われてしまった。
あ……マズイ。
拾い上げるなり、興味無さげにそれを見つめる社長。
だが、読み上げて急に真顔になると私の方へ振り返った。