秘書課恋愛白書
「社長はそう思うかもしれませんが、私は私で会社に恩義があるんです!だからやってもいいかなって思ってます」
「へぇー……」
仮にも一番入りたかった会社に新卒で入社して5年もお世話になったのだ。
社長がなんと言おうが、これは私にきた企画なのだからやることやってこっちに来たいというのが本音。
「……わかったよ。僕が出る」
「え?」
今、なんと?
背中越しに聞こえた声に顔だけ振り向くと、ブスーッとした表情で頬杖をついていた。
「綾女は絶対出さない。だから僕が出る。これは決定事項だから」
「え…でもそれじゃ」
「社長命令。いいだろ?僕の特集組めるだけでも有難いと思ってほしいね」
相変わらずの上から目線。
急にそういう回答に至ったのか理由はわからないが、出てくれるというなら良いに越したことはない。
「わかりました…じゃあ後輩と会社にはそう連絡しておきます」
だからとりあえず降ろしてもらいたい。
お腹を締め付ける腕を引き剥がそうと頑張るが、力の差は歴然で私が両手で引っ張ってもビクともしない。
「あのー…降ろしてください」
「もう一個条件がある」
「はい?」
私が出ない代わりに社長が出ることで話は終わったと思っていた。
だが、社長の中で話は終わっていなかったらしい。