秘書課恋愛白書
隣に用意した控え室。
そこにいる社長を呼びに行くと、出版社から来ているメイク担当の女性が社長の髪の毛を整えていた。
きゃっきゃとはしゃぎながら社長に話しかけるメイク担当者。
私が入って来たことにも気が付かないほど社長にメロメロで少し張り切っているようにも見えた。
社長は社長でだるそうにスマホを弄りながら好きなようにさせて時々適当に返事をする。
その状況に一瞬動揺してしまったが、私がわざとらしく咳払いをすると二人ともこちらに気がついた。
「社長お時間です。お願いいたします」
「わかった」
前髪を掻き上げ、少しだけ遊ばせた社長はいつもよりもかっこ良く見える。
扉を閉め、横目で社長をチラ見すると私の視線に気付いたのかこっちを見たので反射的に目を逸らしてしまった。
「なに」
「な、なんでもございません!」
私の反応が気に入らなかったのか、廊下に出た瞬間壁に追いやられ社長と壁に挟まれてしまった。
不覚にもドキドキして頬を赤らめる私に社長はニヤリと口角を吊り上げた。
「どーせ僕に見惚れてたんでしょ?」
「違いま、す!」